遺言 とは、自分が亡くなった後に遺産をどのように分けてもらいたいかという意思を示す書面のことです。

「まだ自分は元気だから大丈夫」「後のことは残った者で何とかしてくれるだろう」

などと思いがちですが、人の死はいつ訪れるか分かりませんし、何も決めずにおいたところ、相続人の間で遺産の取り分を巡ってトラブルになったケースも多くあります。
残された人たちが困らないように遺言でご自分の意思を示しておきましょう。

遺言 を作成する前に

遺言には一定の形式やルールが定められているため、有効な遺言書を作成するためには、遺言を残す人(遺言者)が判断能力を備えている等の条件を満たすことと、相続人や所有財産の確認などの準備といったことが必要となります。

ここでは、遺言を書く際に必要とされる条件と、準備すべきことについて説明します。

遺言能力とは

遺言は必ず本人が行わなければならず、代理での遺言は認められません。
そのため、遺言者には、遺言の内容や遺言をした結果について理解し、判断できるだけの意思能力が求められます。これを「遺言能力」と言います。

遺言能力を有するとされる条件は以下の通りです。

  • 満15歳以上であること
  • 遺言書作成時に判断能力を有すること

なので、仮に、

  • 認知症である(または、その疑いがある)
  • 精神疾患により意思能力がないと診断されている

といった人が遺言書を作成したとしても、遺言能力の有無について裁判となった場合、無効と判断される可能性が高いと考えられます(遺言能力の有無については、遺言内容の複雑さや重要性、遺言者の判断能力を示す様々な要素などが総合的に判断されます)。

なお、成年被後見人の場合、医師2名以上の立ち合いで「事理を弁識する能力を一時回復した」証明を受けられる場合、遺言を行うことが可能です(民法973条)。
※成年後見人は身分行為を代理して行うことができないため、被後見人に代わって遺言を作成することはできません。また、被保佐人、被補助人にはこのような制限はありません。

遺言書作成のための準備

遺言を書く前に、整理しておかなければならないことがあります。それは、

  • 保有財産のリスト化をする
  • 誰にどのくらい財産を遺すかを考える
  • 遺言の方式・保管先等を決める

の3つです。以下、それぞれについて説明します。

1.保有財産のリスト化
まずは、ご自身にどんな財産がどのくらいあるのかを明確にします。不動産や有価証券等の場合、ある程度の評価額も明らかにできるといいでしょう。
これらをリスト化したものが、そのまま財産目録の記載内容となります。

例)
預貯金…通帳・定期証書
不動産…登記簿謄本・固定資産税納税通知書
株式・国債・投資信託…取引残高報告書、取引証明書、残高証明書、等
2.財産の分配方法
保有する財産を明確にした後は、財産を誰にどのくらいのこすかを決めていきます。
遺言で財産を遺す相手は自由に決めることができます。
ご自身のご家族だけでなく、ご親族や第三者への相続も可能です。

ただし、遺留分の権利者となる方がいらっしゃる場合は、その方の遺留分割合についても十分に配慮しながら決めていきます。
3.遺言の方式・保管先などの決定
遺言の方式、保管先、等を決めます。
遺言の方式、保管先の詳細については、後述します。

例)
遺言の方式…自筆証書遺言にするか、公正証書遺言にするか

保管先…(自筆証書遺言の場合)自分で保管するか、相続人のうちの誰かに保管を任せるか
※自筆証書遺言保管制度(保管先:法務局)、公正証書遺言(原本保管先:公証役場)を利用した場合、考慮に入れなくてよい

その他…遺言執行人を選任するか、等

遺言 の方式について

遺言にはいくつかの方式がありますが、主に使われているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言の二つです。

民法では遺言の要件を定めてあり、この要件を満たせていない遺言は無効となりますので、作成に際しては必ず作成要件を抑えておかなければなりません。

以下、自筆証書遺言と公正証書遺言それぞれの特徴について解説します。

自筆証書遺言について

自筆証書遺言とは

遺言書見本
例①:自筆証書遺言
財産目録見本
例②:財産目録
例③:自筆証書遺言の訂正

法務省 自筆証書遺言に関するルールが変わります
「自筆証書遺言の方式(全文自書)の緩和方策として考えられる例の参考資料 」「遺言書の訂正の方法に関する参考資料」より引用


自筆証書遺言とは、遺言者ご自身で作成する遺言のことです。
自筆証書で遺言を残すためには、上の例①のように、遺言者が、遺言書の全文(作成年月日、氏名含む)を自書し、押印する必要があります。

自書以外の方法、例えば、本人以外の方の代筆やワープロソフトで作成したものをプリントアウトして署名押印するなどして作成した場合は、遺言そのものが無効となってしまいますので、必ず遺言者自身の字で書かなければなりません。

ただし、財産目録の部分に関しては、例②の通り、本文をパソコン等で作成し、印刷したものに署名押印する方法でも構いません。また、相続する預金通帳のコピーや不動産の登記事項証明書に署名押印する形も認められます。

遺言書本文に変更の必要が生じた場合には、例③のように該当する箇所に変更した内容を付記して押印し、欄外に加除した文字数等を記載し、署名します。
この形式に則していない訂正等があった場合、その訂正内容は無効になりますが、遺言そのものが無効になることはありません

保管場所、方法については特に定められたものはありません。相続人のうちの一人、または信頼できる人に遺言を託すことも可能です。また、必ずしも封印をしなければならないということはありません。ただし、封印をした場合は、家庭裁判所以外での開封ができなくなります

封印をする場合、相続人の不注意で検認前に開封してしまわないようにするために、封筒の裏などに「開封せずに家庭裁判所に提出」するといった旨を記載しておくと良いかもしれません。

付言事項とは

付言事項とは、相続財産のこととは別に、相続人に遺したい言葉、希望すること等を伝えるために遺言書に記載するものです。付言事項には、上記自筆証書遺言の例のように、必ずしも記載しなければならないものではなく、法的効力もありません。

基本的には何を書いても構いませんが、主に、

  1. 遺言書を書くに至った経緯や動機
  2. 財産配分の目的・理由の説明
  3. 遺品の処分について
  4. 事業や祭祀の承継について
  5. 家族への感謝の気持ち、希望すること

などが記載内容の例として挙げられます。

特に1、2に関しては、相続人の間で分与した財産に差が出る場合、遺族間のトラブルを避けるためにもしっかりと説明しておいた方が良いでしょう。

気を付けたいのは、葬儀の方法や臓器提供・献体等の希望といった、死亡後すぐにおこなわなければならない手続きについては、遺言の付言事項として記載しない方が良いということです。

なぜなら、封印をした自筆証書遺言は検認手続きまで開封できませんが、検認の手続きは1か月ほどかかります。また、自筆証書遺言保管制度を利用している場合でも、閲覧申請に必要な戸籍などの書類を集めるために、ある程度の時間がかかります。そのため、例えば、葬儀方法の希望を付言事項で遺していたとしても、遺言書の内容を確認する頃には全て終わった後だったということになりかねないからです。

そのような希望がある場合には遺言ではなく、あらかじめご意向をご家族に伝えておくか、別途書面にして預けておくのが良いでしょう。

自筆証書遺言の記載における注意点

遺言の内容(対象となる財産、誰に相続させるか、等)は具体的かつ明確に記載するのは当然のことですが、どれほど気を付けていてもあいまいな表現や読み手によって解釈が分かれるような記載をしているケースが数多くみられます。

特に多く見受けられる「遺言書の記載において避けるべき表現」の例を、以下に挙げておきますので参考にしてください。

自筆証書遺言で避けるべき記載例

例1.長男の一郎に相続させる

…自筆証書遺言例①のように「長男 甲野一郎」とフルネームで記載する

例2.自宅の○○市○○町〇ー〇の土地・建物を相続させる

…住所での記載だと同じ住所地に複数の建物がある場合等があるため、自筆証書遺言例②のように土地は地番まで、建物は家屋番号まで記載する
 ※「地番」「家屋番号」については登記事項証明書に記載されています。登記事項証明書の見方のページを参照ください。

例3.○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○の預金(預金額は1000万円)について、長男 甲野一郎に600万円、次男 甲野二郎に400万円を相続させる

…遺言書の記載時に預貯金が1000万円あったとしても、遺言者が亡くなった時点での預金額が増減している可能性があるので、例えば「長男 甲野一郎に10分の6、次男 甲野二郎に10分の4の割合で相続させる」と記載するのが適当

検認とは

検認とは、相続人に対して遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の現状を保全して、遺言書の変造を防止するための手続です。

遺言者が亡くなった後、遺言書を保管していた方、または遺言書がのこされていたのを発見した方は、遅滞なく遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書の検認の申立てをしなければなりません(公正証書遺言、法務局において保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」については検認不要)。

なお、相続する土地や家の登記をおこなう際や、預貯金等の相続手続の際などに検認済みの遺言書の提示が求められるため、仮に遺言の内容に関して相続人全員が異存がない場合であっても、家庭裁判所の検認手続きは必ず行わなければなりません

検認の手続は、通常は以下のようにおこなわれます。

検認申立て
検認の申立ては遺言書の保管者、遺言書を発見した相続人がおこないます。
検認の申立てがあると、家庭裁判所から相続人全員に対して、検認を行う日(検認期日)を通知します。
申立人が持参するものは、遺言書、申立人の印鑑、被相続人・相続人の戸籍謄本、その他の必要書類(家庭裁判所から指示があれば)、等です。
検認期日
裁判官は、申立人から提出された遺言書を出席した相続人等の立会のもと検認します。
なお、申立人以外の相続人全員がそろわなくても検認手続はおこなわれます(欠席者には後日、家庭裁判所から検認を実施した旨の通知があります)。
検認済証明書の申請
検認終了後、検認済証明書(遺言の執行に必要)の申請をします。

検認に関する注意点

  • 検認は遺言書の変造・偽造を防止するために現状を保全する手続きであり、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。したがって、民法で定められた要件を満たしていない場合、検認後であっても遺言が無効となる可能性があります。
  • 家庭裁判所の検認手続きを行わずに遺言を執行した場合、封印されてある遺言書を家庭裁判所外で開封した場合、ともに5万円以下の過料を処される可能性があります(民法第1005条)

自筆証書遺言保管制度とは

自筆証書遺言は、自宅で保管されることがほとんどでした。

しかし、

  • 家族に遺言の存在を伝えていなかったため、遺品整理の際に知らずに破棄されてしまうケース
  • 遺言書の存在は伝えていても、保管場所まで伝えていなかったので、相続発生後に遺言書が見つからないケース

などがあり、せっかく遺言を残していたとしても被相続人の意向が相続人に伝わらずに終わってしまうことがありました。

また、自筆証書遺言の検認手続きが煩雑で時間がかかるということも相続人にとって負担となっていました。

これらのデメリットを解消するため、令和2年7月から始まったのが、自筆証書遺言保管制度です。

自筆証書遺言保管制度を利用すれば、法務局で自筆証書遺言を保管してもらうことができ、さらに、死亡時通知の手続きをしておくと、遺言者が亡くなった際にあらかじめ指定した遺族に遺言書が保管されている旨が法務局から通知されるので、遺言書の存在が知られずにおわってしまうといった危険性がなくなります。

また、法務局で保管される自筆証書遺言は検認が不要というメリットもあります。

以下、遺言者(被相続人)、相続人それぞれの手続きの詳細を説明します。

遺言者(被相続人)の手続き
死亡時通知記入欄見本
死亡時の通知の対象者欄見本
法務省 自筆証書遺言書保管制度「死亡時通知について」より引用

遺言書を作成する
遺言書を作成します。遺言書の形式は自筆証書遺言の項で説明したとおりですが、遺言書保管所(法務局)でも相談することができます。
ただし、遺言書の記載内容が法的に有効かどうかといった、遺言書の内容に関する相談や保証はできません
遺言書保管所に保管申請をする
遺言書保管所は法務局内にあります。

申請可能な遺言書保管所は、以下の三つです。
・遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
・遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
・遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所

上記のいずれかに電話で申請予約をし、
・遺言書(ホチキス留め、封印不要)
保管申請書
・住民票の写し、顔写真付き身分証明書、手数料分の収入印紙
を持参して、遺言者本人が申請を行います(代理不可)。

<死亡時通知について>
死亡時通知とは、遺言者の希望に応じて、遺言書保管所が遺言者の死亡の事実を確認した場合に、あらかじめ遺言者が指定した人に対して、遺言書が保管されている旨を知らせるものです。

死亡時通知は保管申請時に併せて申請するもの(申請様式は上図参照)で、遺言者は通知の対象者として、推定相続人、遺言書に記載された受遺者、遺言執行者の中から一名を選ぶことができます。

亡くなったあとに、相続人に遺言書の存在を確実に知らせるためにも死亡時通知を希望しておくと良いでしょう。

<関係遺言書保管通知について>
死亡時通知と似たものに、関係遺言書保管通知というものがあります。

この通知は、遺言書保管所に保管されている遺言書について、遺言者の死亡後に相続人などが、遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付を申請したとき、遺言書保管所から申請者以外の全ての関係相続人等に対して、遺言書が遺言書保管所に保管されている旨を知らせるものです。

関係遺言書保管通知に関して、特別な手続は不要です。
死亡時通知は手続きさえしておけば、遺言者が亡くなった時に自動的に通知がされますが、関係遺言保管通知に関しては、遺言書保管所に誰も遺言書の閲覧・証明書交付申請などをしなければ、遺言書が保管されている旨の通知はされません
保管証を受け取る
手続き完了後、上図のような「保管証」が渡されます。

保管証には、遺言書原本を保管する遺言書保管所名、保管した遺言書に付される保管番号、などが記載されています。
保管証は再発行できませんので、コピーを家族の方に渡しておくと良いでしょう。

なお、遺言者がご存命の間は、遺言者ご本人以外、保管された遺言書の閲覧請求ができません
遺言書の閲覧・保管の撤回・内容の変更をする
<閲覧について>
遺言書原本の閲覧は申請した遺言書保管所でしかできませんが、モニターによる閲覧は全国どこの遺言書保管所でも可能です。
遺言書保管所に閲覧予約の上、閲覧請求書と顔写真付き身分証明書、手数料を持参して申請します。
閲覧請求は遺言者ご本人のみ可能です。

<保管の撤回について>
もし遺言書の保管申請を取り消したい場合、保管申請した遺言書保管所に予約の上、撤回書と顔写真付き身分証明書を持参して手続きをします。

<変更の届出について>
転居によって住所が変わった、遺言書の内容を変更したい、等の場合、遺言書保管所に予約したうえで変更の届出書と顔写真付き身分証明証、変更内容が証明できる書類(例えば住所変更の場合、住民票 届出予約の際に法務局に確認して下さい)を持参して手続きをします。

なお、変更に関しては必ず遺言者本人が直接遺言書保管所に出向く必要はなく、法定代理人による届出や郵送(予約不要)による届出も可能です。
また、全国どこの遺言書保管所に届出をしても構いません。

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相続人の手続き
遺言書の閲覧請求

遺言書原本の閲覧は申請した遺言書保管所でしかできませんが、モニターによる閲覧は全国どこの遺言書保管所でも可能です。

<閲覧できる人>

  1. 相続人・受遺者、遺言執行者
  2. 上記の者の親権者または法定代理人

<必要書類>

遺言書保管所に閲覧予約の上、閲覧請求書と顔写真付き身分証明書、手数料を持参して申請します。

  • 閲覧請求書
  • 遺言者の死亡が確認できる書類(戸籍など)
  • 請求者の住民票の写し
  • 請求者の顔写真付き身分証明書由
  • 発行手数料分の収入印紙

  • (請求者が相続人の場合)相続人であることが確認できる戸籍謄本
  • (請求者が遺言施行者等、相続人以外の場合)請求者の住民票の写し
  • (請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書  ※発行3か月以内のものに限る
  • (請求者が法定代理人である場合)親権者であることが確認できる戸籍謄本、後見登記事項証明書  ※登記事項証明書は発行3か月以内のものに限る

関係遺言書保管通知の送付を受けた場合、以下の書類は不要(送付がない場合は必要)

  • (住所記載のある法定相続情報一覧図がある場合)法定相続情報一覧図の写し
  • (法定相続情報一覧図に住所記載がない場合)法定相続情報一覧図の写し、相続人全員の住民票の写し、(廃除者がいる場合)廃除者の戸籍謄本 ※住民票は発行3か月以内のものに限る
  • (法定相続情報一覧図がない場合)遺言者(被相続人)の出生から死亡までの全戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票の写し ※住民票は発行3か月以内のものに限る
「遺言書情報証明書」交付の請求

遺言書情報証明書は、保管されてある遺言書の画像情報が全て印刷されており、遺言書原本の代わりとして各種手続に使用することができます。
なお、遺言書情報証明書があれば、家庭裁判所の検認手続は不要です。

<手続きができる人>

  1. 相続人・受遺者、遺言執行者
  2. 上記の者の親権者または法定代理人

<必要書類>

最寄りの遺言書保管所に予約したうえで、以下の書類を添えて請求します。

  • 交付請求書
  • 遺言者の死亡が確認できる書類(戸籍など)
  • 請求者の住民票の写し
  • 請求者の顔写真付き身分証明書由
  • 発行手数料分の収入印紙

  • (請求者が相続人の場合)相続人であることが確認できる戸籍謄本
  • (請求者が遺言施行者等、相続人以外の場合)請求者の住民票の写し
  • (請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書  ※発行3か月以内のものに限る
  • (請求者が法定代理人である場合)親権者であることが確認できる戸籍謄本、後見登記事項証明書  ※発行3か月以内のものに限る

関係遺言書保管通知の送付を受けた場合、以下の書類は不要(送付がない場合は必要)

  • (住所記載のある法定相続情報一覧図がある場合)法定相続情報一覧図の写し
  • (法定相続情報一覧図に住所記載がない場合)法定相続情報一覧図の写し、相続人全員の住民票の写し、(廃除者がいる場合)廃除者の戸籍謄本  ※住民票は発行3か月以内のものに限る
  • (法定相続情報一覧図がない場合)遺言者(被相続人)の出生から死亡までの全戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本と住民票の写し ※住民票は発行3か月以内のものに限る
「遺言書保管事実証明書」交付の請求

遺言書保管事実証明書とは、遺言者が亡くなった後、自分を相続人や遺言執行者とする遺言書が遺言書保管所に預けられているかどうかを確認するためのものです。

<手続きができる人>

  1. 相続人・遺言執行者
  2. 上記の者の親権者または法定代理人

<必要書類>

最寄りの遺言書保管所に予約したうえで、以下の書類を添えて請求します。

  • 交付請求書
  • 遺言者の死亡が確認できる書類(戸籍など)
  • 請求者の住民票の写し
  • 請求者の顔写真付き身分証明書由
  • 発行手数料分の収入印紙

  • (請求者が相続人の場合)相続人であることが確認できる戸籍謄本
  • (請求者が法人の場合)法人の代表者事項証明書  ※発行3か月以内のものに限る
  • (請求者が法定代理人である場合)親権者であることが確認できる戸籍謄本、後見登記事項証明書  ※発行3か月以内のものに限る

なお、郵送(予約不要)による請求も可能です

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公正証書遺言について

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、遺言者から伝えられた遺言内容を公証人が書面にして作成する遺言書のことです。

公証証書とは、法律上の関係を明確化して安定を図り、トラブルを未然に防ぐために公証人によって作成される公文書です。
公証人は、裁判官や検察官、弁護士など法律の実務に長く携わった人で公募に応じた人の中から法務大臣によって任命されます。

公正証書遺言は、仮に遺言の内容に関する紛争が起こったとしても、遺言者の遺言作成当時の意思能力について問題となりづらく、公正証書遺言の原本は公証役場に保管されるため、遺言書の改竄や偽造が問題となることもありません。

また、公正証書遺言は裁判所による検認手続きが不要のため、遺言執行もスムーズに行うことができます。

公正証書遺言の作成の流れ

公正証書遺言を作成するまでの流れを、

  1. 必要書類の準備
  2. 遺言書作成日の予約と公証人との打ち合わせ
  3. 遺言書作成当日

の順に確認をしていきます。

必要書類等の準備
<事前に準備するもの>

• 遺言書の原案
• 財産目録(預金通帳、各種証書等の写しも併せて必要)
「遺言書を作成する前に」の項で説明したように、財産目録を基に、ご自身の財産を誰に、どれくらい相続させるのか、などを考えて原案を作ります。

<必要な書類>

• 印鑑証明書と実印、または顔写真付き身分証明書と認印

• 遺言者と相続人との関係がわかる戸籍謄本
相続人が孫、甥姪など、その本人の戸籍謄本だけでは遺言者との続柄がわからない場合、その続柄の分かる戸籍謄本が全て必要です。

• 受遺者(遺言者の財産の遺贈を受ける者)の住民票または登記簿謄本(法人の場合)

• 固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書
• 不動産の登記簿謄本
いずれも財産に不動産が含まれている場合に必要です。

• 証人の確認資料
遺言公正証書作成時には、証人2名が立ち会います。
当日立ち会ってもらう証人それぞれの、住所、職業、氏名、生年月日のわかる資料(身分証明書等)が必要となります。
ただし、推定相続人・受遺者とそれぞれの配偶者、直系血族等の利害関係人や未成年者等は証人になれません。
もし、証人を依頼できる人がいない場合、公証役場で証人の手配を依頼することも可能です(公証役場に要相談)。

• 遺言執行者の特定資料
遺言執行者とは、遺言の内容を実現する者であり、遺言書に原則として記載する必要があります。
相続人や受遺者が遺言執行者になる場合は不要ですが、司法書士や弁護士などを遺言執行者とする場合は、その人の住所、職業、氏名、生年月日が確認できる資料が必要となります。

なお、印鑑証明書、登記簿謄本、住民票は発行3か月以内のものに限ります。
また、公正証書遺言の作成は遺言者本人でなければなりませんが、準備段階において遺言者の家族などが、使者として遺言作成に必要な資料を公証役場に持参したり、本人の意思を公証人に伝えることは可能です。
遺言書作成日の予約と公証人との打ち合わせ
遺言書の原案などの必要書類の準備ができたら、公証役場へ提出をします。

書類の提出後、公証人との遺言書案の打ち合わせを重ねながら、遺言書作成日を決め、予約をします。打ち合わせの期間は、大体ひと月程度を見ておくと良いでしょう。

作成日当日は、遺言者本人が公証役場に行く必要があります。
もし、本人が病気等で公証役場へ行くことができない場合、公証人に出張してもらうこともできます(公証役場と要相談)。
遺言書作成当日
当日は、証人2名と、公証人立ち会いのもとで遺言書作成手続きが進められます。
遺言者と証人2名が公証人の部屋へ向かいますが、証人以外の方は同席できませんので、付き添いのご家族がいる場合は控室で待機します。

入室後、公証人から簡単な挨拶と、遺言者と証人2名に対して公証人から本人確認と遺言者の意思能力の確認のための質問を受けます。
質問の内容は難しいものではなく、遺言者の住所、氏名、年齢、生年月日、遺言書の概要などが聞かれます。

公正証書遺言は「原本」と、同一内容の「正本(原本と同じ効力を持つ写し)」「謄本(効力の無い原本の写し)」の計3通が作成されています。
 
本人確認後、公証人の手元にある原本の内容を読み始めます。遺言者には正本を渡してくれますので、遺言者は手元の遺言を見ながら公証人の読み上げた内容を確認します。
読み上げが終わり、内容に間違いがないことを確認すると、公証人から原本の最後のページの所定欄に署名押印するよう求められますので、遺言者と証人2名が署名押印をします。

原本はそのまま公証役場に保管されますが、正本と謄本は持ち帰ることができますので、遺言者ご本人や遺言執行者などで保管するようにします。

自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶか

自筆証書遺言と公正証書種遺言のメリット、デメリットについてまとめます。

自筆証書遺言公正証書遺言
作成者本人公証人
保管者本人  ※自筆証書遺言保管制度利用の場合は遺言書保管所(法務局)原本:公証役場  正本・謄本:本人など
メリット・費用がかからない
・手軽に作成でき、作り直しも容易である
・手書きのため、自分の相続人などに対する気持ちや考えがより伝えやすい

・遺言書保管所で保管するので紛失や変造の心配がない※
 ※自筆証書遺言保管制度を利用している場合
・公証人が作成するため、遺言者が病気等で文字が書けなくても作成できる
・公証役場で保管するので紛失や変造の心配がない
・記載内容の不備で無効となることがない 
・遺言作成時の意思能力の有無でトラブルになる可能性が少ない
デメリット・(財産目録を除いた)全文を自筆しなければならない
・記載内容の不備で無効になるおそれがある
・遺言作成時の意思能力の有無を確認できないため、トラブルになることがある

・紛失や変造、隠匿の可能性がある※
・家庭裁判所の検認手続きが煩雑※
 ※自筆証書遺言保管制度を利用している場合を除く

・公証人への手数料、証人への報酬(第三者に依頼した場合)等の費用がかかる
・遺言書作成の打ち合わせ等の手続きが煩雑である

自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらが良いかといった問題は、それぞれのメリット・デメリットのうちのどれを優先するかによって変わってきますが、以下を参考に、

自筆証書遺言を選んだ方が良い場合
  • 手書きでご自身の気持ちのこもった遺言を作りたい場合
  • 安価に遺言書を作りたい場合
  • 変造や紛失などを防ぎたい場合  ※自筆証書遺言保管制度利用の場合
  • 相続手続きの煩雑さを避けたい場合  ※自筆証書遺言保管制度利用の場合
公正証書遺言を選んだ方が良い場合
  • 遺言書を自書できない場合
  • 遺言作成時の遺言者の意思能力についてトラブルとなる可能性を少なくしたい場合
  • 形式や内容が確実な遺言書を残したい場合 
  • 相続手続きの煩雑さを避けたい場合

遺言執行者とは

遺言執行者とは、遺言者の死後にその意思に基づき、遺言書の内容に従って必要な手続きをする人のことを言います。

遺言執行者は、

  • 相続人の調査
  • (遺言者死亡時の)相続財産の調査及び目録の作成
  • 金融機関の口座の名義変更、解約
  • 有価証券の名義変更
  • 不動産の相続登記
  • 相続人の廃除
  • 認知      

などの手続きを行う権限を持ち、未成年者や破産者以外であれば、相続人を含め、誰でも就任することができます

なお、遺言執行者の選任は任意ですが、相続人の廃除と認知に関する手続きに関しては遺言執行者にしかできないため、もしこれらの手続きが必要な場合には遺言執行者を選任しなければなりません。

遺言執行者の仕事の流れ

就任通知書の送付
遺言者が亡くなり、遺言執行者の就任が決まれば、相続人に対して遺言執行者に就任した旨の通知をします。
相続財産・相続人の調査
亡くなった遺言者の財産の調査と相続人を確定するための戸籍の収集を行います。
財産目録の作成・交付、遺言内容の実行等
調査終了後、財産目録を作成し、遺言書の写しとともに相続人に交付します。
その後、遺言書に書かれた内容に従って財産の分配、名義変更等を行います。
完了報告
相続に関する手続きが全て終われば、手続きが完了したことを相続人に文章で報告します。

遺言執行者の指定・選任・解任・辞退

遺言執行者の指定・選任

遺言者の死後、正式に遺言執行者に就任するためには、遺言者が生きている間に「指定」されるか、遺言者の死後に「選任」されるか、いずれかの決まった方法をとる必要があります。

1.遺言書による指定

遺言執行者として信頼できる人がいる場合は、あらかじめ遺言書に以下のように記載して指定します。

例1)相続人のうちの誰かを遺言執行人として指定する場合

遺言者は本遺言の遺言執行者として、長男○○ ○○を指定する。

もし、遺言執行者が手続きを自分一人でできないと思ったときに、専門家に依頼できるよう、

遺言執行者は必要と認めた場合、その任務を第三者に行わせることができる。

等の文言も付け加えておくとよいでしょう。

例2)第三者を遺言執行人として指定する場合 

遺言者は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所   〇〇県○○市○○町○番○号
氏名   〇〇 ○○
生年月日 ○○年○○月○○日
連絡先  ○○○-○○〇-○○○○

第三者に依頼する場合は、あらかじめ報酬を決めておき、別の項に、

遺言者は、遺言執行者に対する報酬を、金〇万円(「遺言執行対象財産の総額の〇パーセント」のように割合で記載することも可)とする。
なお、遺言の執行に係る費用は別途支払うものとする。

等の記載しておくとよいでしょう。

2.遺言書による「遺言執行者を選定する第三者」の指定

遺言作成時に適任者がいない場合に、遺言書で遺言執行者を指定する代わりに、「遺言執行者の選任をしてくれる人」を指定します。
そして、相続の発生時に遺言執行者の選任を任された人が、その時の状況に応じて適任者を遺言執行者として選ぶという方法です。

3.家庭裁判所による選任
  • 遺言執行者として遺言に指定された人が辞退した
  • 遺言執行者を解任した
  • 遺言執行者として指定された人が亡くなっていた
  • 遺言書には遺言執行者の指定がなかったが、遺言執行者を選任したい

など、新たに遺言執行者の選任が必要となった場合には、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で「遺言執行者の選任の申立」を行うことで遺言執行者を選任することができます。

申立てができる人は、相続人、遺贈を受けた人、遺言者の債権者などです。

「遺言執行者選任の申立」に必要な書類の例

  • 申立書(こちらから入手できます)
  • 遺言者の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本、住民票の除票(役所によって異なりますが、死亡届提出後1週間から10日ほどで反映されます)
  • 遺言執行者になる人の住民票、遺言書の写し
  • 遺言者との関係を示す資料(親族の場合は戸籍謄本)、等

※場合によっては他に必要とされる書類もありますので、申立てをする家庭裁判所にお問い合わせください 
≫家庭裁判所の一覧と連絡先はこちら

遺言執行者の解任

遺言執行者を解任したい場合、

  1. 遺言執行者としての任務を怠った場合
  2. 解任するための正当な事由がある場合

の条件に当てはまれば、家庭裁判所へ解任の申立をし、審判の確定を経て、遺言執行者を解任することができます。

具体例としては、

  • 相続開始後、相続人調査や財産目録の作成に取り掛からなかった
  • 相続財産の使い込みがあった
  • 一部の相続人を不正に利する行為があった                                                                                                                            
  • 病気によって任務を遂行できない

場合などが該当します。

逆に、

  • 遺言執行者と感情的に対立している
  • 遺言に記載されている報酬額が高すぎる
  • 遺言に従って財産分与をした結果に納得がいかない

といったような理由では解任できません。

遺言執行者を解任するためには、相続人などの利害関係者を代表する一人が、遺言者の死亡時の住所を管轄する家庭裁判所に、遺言執行者解任の申立をおこないます。

「遺言執行者解任の申立」に必要な書類の例

  • 申立書(こちらから入手できます)
  • 遺言者の死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本、住民票の除票(役所によって異なりますが、死亡届提出後1週間から10日ほどで反映されます)
  • 申立人、遺言執行者それぞれの戸籍謄本、住民票
  • 遺言書の写し(遺言書による指定の場合)、遺言執行者選任の審判書(家庭裁判所による選任の場合)

※場合によっては他に必要とされる書類もありますので、申立てをする家庭裁判所にお問い合わせください 
≫家庭裁判所の一覧と連絡先はこちら

ただし、申立てから解任の審判が下りるまで時間がかかりますが、正式に解任されるまでの間は遺言執行者の任務遂行を妨げられないため、すぐにでも職務を停止させる必要がある場合には「職務執行停止の申立」を同時に行わなければなりません

遺言執行者の辞退・辞任

遺言書作成時に遺言執行者として指定されることに同意したものの、その後事情があって就任できなくなったなどの場合、遺言執行者の就任前であれば辞退することができます。
就任辞退の意思表示は口頭でも構いませんが、後々のトラブルを避けるため、文章で通知した方が良いでしょう。

ただし、仮に辞退の意思があったとしても、相続人から期間を定めたうえで遺言執行者の就任を承諾するかどうかを問われ、期間内に回答しなかった場合は、就任を承諾したものとみなされます。

遺言執行者に就任してしまった後の辞任は、家庭裁判所に辞任の申立をする必要があります。

辞任は辞退とは異なり、病気、転居、長期出張などによって任務遂行が困難である等の正当な理由がある場合に限ります。

遺言執行者を選任したほうがよい(しなければならない)場合

遺言執行者は必ずしも選任しなければならないわけではありませんが、以下に該当する場合、遺言執行者を選任した方が手続きがスムーズに行えます。

遺言書に子どもの認知、相続人の廃除、廃除の取消が記載されている場合

いずれも遺言執行者にしか手続きが認められていませんので、遺言執行者の選任が必須となります。

子供を認知する旨の遺言書がある場合、就任から10日以内に遺言者の本籍地、または、認知する子供の本籍地などの自治体に届出をしなければなりません。

また、相続人の廃除は、遺言執行者から家庭裁判所に廃除の申立てを行います。
遺言による相続人の廃除が家庭裁判所に認められるためには、廃除される相続人から虐待されたなどの理由と廃除したい旨が遺言書に明記されていなければなりません。

推定相続人の廃除の取り消しが遺言書に書かれてあった場合も同様で、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の取消の申立てを行います。
この場合、廃除を取り消す理由の記載の有無は問われません。

第三者への遺贈による不動産登記が必要な場合

遺言書に、相続人以外の親族や知人、非営利団体などに遺言者の不動産を遺贈する記載があった場合、遺言者から遺贈される人(受遺者)にその不動産の所有権を移転するための登記は、受遺者と相続人全員が共同で申請します。

しかし、遺言執行者が選任されている場合は、受遺者と遺言執行者だけで登記申請が行うことができるため、

  • 相続人が遺贈によって取り分が減ることを不快に思い、登記手続きに協力してくれないなどのトラブルを回避できる
  • 相続人全員に手続きのための書類の準備を依頼するといった煩雑さを避けることができる

等のメリットがあります。

遺言の執行に不安がある場合

遺言書を書いてみたものの、自分の思い通りに遺言が実現されるか不安だという場合は、あらかじめ遺言書で遺言執行者を指定しておくと良いでしょう。
トラブルを回避し、確実な遺言の執行を期するなら、遺言執行者には相続人の誰かではなく、手続きに精通した弁護士や司法書士などの専門家を指定する方がよいかもしれません。

 


 

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